百姓大王の金言

「今、農村はおもしろい!」

30年前就農するにあたり、自分の心意気を示した言葉がこれだ。
農家の長男として生まれ、敷かれたレールの上を歩んできたように思うが、

自分自身がやりたい農業とは、どういうものだろうと、思い悩んでいた学生時代。
東京で全国の仲間と学んだ中で、いろんな出会いが、自身の考え方の基礎になっている。
いろんな講師の先生が来られたが、小松先生は「おもしろ農民」という言葉を使われた。
私自身、半ば義務感というものがあって、農業に入っていったという気がしていたため、

おもしろいという表現には、少し違和感があったと思う。
また、農民作家の中山さんというおばちゃんが、日々の自然や出来事を詩作ということで

表現している話があった。色の黒いそのいかにも百姓のおばちゃんに、私は質問をした。
「いかにも、百姓を一生懸命やっておられるようですが、楽しみ、特に休みはあるのですか?

また、あるとすれば何をされていますか?」
「たまに休みをとって、東京に、美術館めぐりをしに来ますよ。」
ガーン!!!衝撃!!!                               
私の今までの農業観では、考えられなかった回答だったからだ。
農業は、ひたすら、下を向いて、耕すものだと教え込まれていたし、

いい農産物を作ることこそが、使命であると考えていたからだ。
おもしろ農民の中には、肉牛を飼って、それを肉にして、

みんなでバーベキューをしたりして、楽しんでいる人がいるなどという。
それからも、いろんな考え方、やり方の農業の話を見聞きし、

農業も楽しんでやっていいんだ!と思うようになっていった。
農業、農村の良さは、どこにあるか?
食べ物を自分で作る、それをいろんな加工品にする、きれいな空気、水、景色、

夫婦で仕事が出来、家族で過ごせる、村のまつりや行事、伝統、文化、・・・・
そういうことひとつひとつに価値があり、それをおもしろがりながら、楽しく暮らす。
そこに、農村にしかない価値があるのだ、と思うようになっていった。
自分のふるさと、丹波でそういう価値を確かめ、おもしろく生きていければ・・・
それが、「今、農村はおもしろい!」ということなのだ。
農業、農村、こんないい仕事はないし、こんな魅力のある場所はないと思う。

毎日、ムフフ と笑いながら、過ごしているよ・・・

2017年の年末に

10月22日夜、私は家内と共に東京に居た。
東京に住む弟の親族の葬儀に出席するために上京していた。
テレビでは国政選挙の報道がなされていた。

夜12時、息子から電話が入る。
「お父さん、ハウスが飛んだ、、、」
覚悟はしていたものの、いざとなるとつらいものがあった。
「飛んだものは仕方がないから、身の危険だけはないように台風が通り過ぎるのを待とう。」
寝られない夜を過ごすこととなった。

その日は大型の台風21号の接近が言われており、お昼ごろには大雨。
雨の対策などを万全にして、丹波を後にしてきたのだ。

今年、丹波は1月15日の夜に大雪に見舞われ、我が家もハウスが4棟倒壊。

雪でハウスが倒壊

雪でハウス倒壊2

春、4月5月には雨が全く降らず、田植えや植えたばかりの夏野菜にも厳しい状況が続いた。

畑に水撒き

夏は例年通りの猛暑。

夏の入道雲

ところが、秋になって何とか稲刈りは済ませたものの、

秋野菜の播き付け、植え付けとそれらの生育に痛手となる大雨を幾度も繰り返す。
そして、台風。再びのハウス倒壊。

台風でハウス倒壊

眠らない東京の夜は全く静かで、

台風で大きな被害が出ている片田舎のことなど、これっぽっちも気にする様子もない。
おそらく、野菜も食べ物も明日になれば同じようにスーパーに並び、
コンビニで買い物ができ、レストランではいつものように食事ができるのだから、、、
農業は自然相手の仕事、それはわかってはいるが、これほど厳しい年は私の記憶にはない。

それでも、私たちは次の日、帰宅。
風で傷んだ野菜たちを、一株一株、起こして回るところから仕事を開始した。
水没していた畑も、息子たちが懸命に排水してくれたおかげで、全滅を免れそうだ。

どんな状況でも、自分たちのやれることを、

目の前の出来得ることをつくして、少しでも良いものを作り上げる。
そして、届ける。
決してあきらめない。それが百姓の意地でもある。
農業とはそういう仕事なのだ。

丹波の梅雨明けとは

梅雨明け宣言

2015年7月31日、丹波は本日、梅雨明け宣言!
今朝、田んぼに行ってみると、靄の中、蜘蛛がたくさん巣をかけていました。

毎年、この日が来ると、しばらく、晴天が続くようになります。本格的な暑い夏の到来です。
私・丹波の百姓大王は、この日を勝手に、梅雨明けとしています。

自然の生き物たちに、教えてもらって、暮らしている。そのことに、気が付く日でもあります。
あー、夏か~!!黒豆の土寄せなど、恐ろし~^^

婦木農場前の黒井城跡より

新年婦木夫妻

丹波の雲海

秋になると丹波では雲海が発生します。

大王さまが直々に雲の上へ行って写真を撮ってきました♪

帰り道にはこんな写真も↓

雲海の木漏れ日

平成26年新春を迎えて

2014年新春家族写真

昨年、平成25年は私達農家にとっては厳しい年でした。
春先の低温から始まり、その後の乾燥、夏には連日35度を超える酷暑。
そんな中でも、例年通りの実りを目指して、我が家でも汗を流してきましたが、
あの9月の度重なる大雨によって、稲や豆類は減収を余儀なくされました。
1時間に90ミリなどという、経験したことのないような雨が降り、
大きな災害にはならなかったものの、作物にとっては相当のダメージを受けました。
私の地域の下流にあたる、福知山で災害が起こったことを考えれば、
このくらいで収まったことに感謝しなくてはいけないかもしれません。
その後も思うように天候が安定せず、秋冬野菜もずいぶん遅れてしまい一気に寒い冬に。
本当に厳しい一年でした。
また、農業をとりまく状況(TPPや農政の大きな転換)も先行きが不安なことばかりです。

それでも我が家では、将来にむけての新たな一歩を踏み出した年でもありました。
ホームページの開設。
農家体感施設○(まる)の開館などは、大きな一歩かも知れません。
また、長男が東京の日本農業経営大学校に進学。
今年は、いろんな意味で育てる一年になりそうです。
明るい話題もありました。私達に2人目の孫が産まれたことです。
2人の孫たちを見ていると、「明日への希望」そんな言葉がこころの中に湧いてきて、

また元気が出てきます。
今年一年が、次の一歩につながる飛躍の年になることを願うばかりです。

大地の太陽

大地の太陽

平成25年10月2日「まる」に素敵な時計が飾られました。
近所の木工作家さん木工房ウッドトップ乾善弘氏の作品で、建物によく馴染んでいます。
時計には「大地の太陽」という作品名がついています。
文字盤全体が太陽をイメージ、針の中心の秒針が月になっています。
素材はケヤキがつかわれていて、ずっしりと重厚感があります。
全体から力強さが伝わってきて、こちらも力をもらえるような気がします。
折しも伊勢神宮で遷宮があった日に、この「まる」で新しく時を刻み始めました。
大地の太陽のイメージに圧倒されず、私たちもコツコツ静かに輝ければいいなあと感じています。
「大地の太陽」是非、多くの方に見ていただきたい「作品」です。

まるの時計

夏も近づく八十八夜~ 皐月・立夏の頃 

丹波の初夏は、木々の緑が日に日に、目にまぶしくなってきます。
ご存じ、お茶の新芽。丹波もお茶の産地でもあり、我が家にもお茶の木があります。
田植えが終わるころ、刈り取って、1年分のお茶を作ります。

お茶の葉

そうそう、丹波では、5月8日に卯月、花まつりの日に天道花がささげられます。
諸説ありますが、我が家では、おてんとうさま(私の祖母は、にってんさんと言ってました)に、

感謝し、五穀豊穣をお祈りするものとして、お供えしています。

この頃では、あまり見かけなくなりましたが・・・
ある説では、冬の間、山の神さまとなっておられた神様に、里まで降りてきて頂き、

田の神さまになってもらうという、その目印とも言われています。
まさに、自然と共に生きてきた、私達の祖先の風習なのでしょう。

おてんとうさまにってんさん

小麦も穂が出そろい始めました。

小麦

畑では、そろそろイチゴが赤くなり始めました。

畑のイチゴプリンセス

わが家のプリンセス(孫のあいるちゃん)が、かぶりついています。

たんぼのあぜぬり 卯月・清明~穀雨の頃 

丹波は、今、ダイナミックに風景が変わりつつあります。

この季節、木々が芽吹き、新緑が日に日に濃くなってきています。

田んぼに水がはいり、一気に水田が拡がっていきます。

たんぼのあぜぬり

田んぼに水が入ると、カエルが鳴き始めます。白鷺などの野鳥も集まってきます。
とんぼのヤゴや、小さな生き物が生まれ、育っていきます。

田んぼを作るのには、水がかかせません。

ここ丹波のムラでは、ため池があり、山からの水をいったん貯めて、田んぼに使います。

水路を3月に村人総出で掃除をし、田作りに備えます。

ムラには、水利組合があり、その水を必要に応じて、

役員や水番というみなさんによって、各田んぼに水をいれます。

私達農家は、それぞれ、水利費を払うことになります。

それによって、水番さんたちの人件費や、水を循環させるポンプの維持をしていくのです。
ですから、その水は大切にしなくてはなりません。

山間の農地では、傾斜があるため、田んぼの水が、下へしみだしていきます。

それを止めるのが、あぜぬりです。

田んぼは、ただ、水を入れてかき混ぜればいいというものではありません。

畦ねぎといって、畦際を何回もねり、その泥を畦際によせて、水のしみだしを抑えるのです。

鍬で、どろを、寄せて、ぺタぺタと押さえて行きます。

それこそ、美しい田園風景を演出しています。

田んぼの畦塗り田んぼの畦ぬり

昔からの、農家の知恵、技術とは、すごいものです。